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心理学エッセンス

臨床心理学分野

スクールカウンセラーの行う授業観察の実際

井上 裕樹

2014.10.15
スクールカウンセラーの行う授業観察の実際

 私はスクールカウンセリングを専門にしております。そこで、スクールカウンセラー(SC)が行う小学校での「授業観察」を紹介しようと思います。「授業観察」と言うからには、授業を見に行くのですが、ただ子どもの授業での頑張りを見に行く類のものではありません。それでは、SCは、何を見ているのでしょうか。

 例えば小学校低学年の学級を見に行った時、A君が授業中に立ち歩いていたとします。あなたらならどうしますか?A君は勉強が嫌いなんじゃないかとか、怠けているだけではないかとか、勉強する習慣がついていないのではとか考えて、座って勉強をするようにA君を注意し、それでも立ち歩くことが続くと、他の生徒に迷惑だとか思うかもしれません。

 この時、SCはどうしているのでしょう?傍からSCを見ていると黙って教室にいて、ただ見ているだけに思えるかもしれません。しかし、実際は、心の中で、先生がどのくらい楽しい授業をしているのかを見ながら、「こんなに面白い授業なのになぜA君は立ち歩かなければならないの」とか思いながら観察しています。担任の思いがA君にどれだけ届くのか、担任との関係はつながっているのか、A君は人との関係を求めているのにつながれないのか、それとも求めていないのかなどを見ていきます。

 また班活動で、友人との関係にしっかり入れているのか、入れていないのか、もしくは、はじかれているのか。はたまた、その集団に入ることを望んでいないのか、入れているが気持ちが入れず、心ここにあらずの状態にならざるを得ないのかなど思いを巡らせます。時には、その場から生じてくる葛藤を受けとめる内的な作業も行います。そして、そこで感じたことをベースに家族の状況、A君の生い立ちなどをふまえ、A君と担任や家族との関係に思いを広げていきます。担任の注意や指導、保護者の関わりが、まずA君との信頼感をベースに、彼の有する課題との対峙となっているか。そして、関係の器の中に彼の課題が収まるようなのか、それとも器に収まらずに、担任や保護者が苦慮しているのか、もしくはその課題をクラスや家庭から排除する形の指導や関わりになっていないのか、また、発達障害を疑うべきかなどを考えていきます。
 次にそれらを基に、担任や保護者と話し合いを持ち、A君への理解を深め、彼の課題を皆で抱えていけるように支えることから始めていきます。そして、SCは、粘り強く何度も何度も担任や保護者と話し合いをし、A君への関わりに工夫をこらしていくのです。

 以上、「授業観察」の実際でした。