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心理学エッセンス

臨床心理学分野

健康につながる行動を起こすために

中川 明仁

2016.10.04
健康につながる行動を起こすために

 年々、定期健康診断の結果を見ることに不安を覚えるようになってきました。幸いなことに今のところ全ての数値で正常値を示していますが、1年ごとに増えつつある数値もあります。そのような現実を目の当たりにすると、自分の身体の健康状態にもう少し注意を払わねばと思うこの頃です。

 健康診断を受診されている方なら見覚えがあると思いますが、問診票の中で現在の生活習慣を変える気があるかどうかと尋ねる項目があります。"変える気はない"とか"すでに変えて~ヶ月経っている"などと回答しますね。その質問項目は、人間の健康行動を説明するある理論に基づいています。今日はその理論についてお話しします。

 その理論は「変化ステージモデル」と呼ばれます。元々は喫煙者が禁煙に至るまでのプロセスの研究の中で提唱されてきた理論ですが、現在はさまざまな生活習慣病の治療場面でも導入されています。理論の概要ですが、人間が自分の行動を変える際には、5つの段階を踏むと考えます。「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージです。「無関心期」はその名の通り、現状に満足し(あるいは不満を覚えながらも)行動を全く変える気がない段階、「関心期」は必要は感じつつも行動には移せていない段階、「準備期」は行動を変えようと思い、何かしらの行動を起こしている段階、「実行期」はすでに行動を変えて6ヶ月未満の段階、「維持期」は行動を変えて6ヶ月以上の段階です。

 実際の治療場面ではまずは患者さんがいま現在、どの段階にあるのかを評価します。それぞれの段階にある患者さんの医療者への反応には特徴があります。たとえば肥満症の患者さんに対して、食事改善の必要性を説明した時、「無関心期」にある場合、"辛い思いをしてまで食事を減らす気はない"など否定的な発言が見られます。「関心期」では、"減らしたいけど家族が買ってくるから食べてしまう"など言い訳が目立ちます。これに対し医療者は、患者さんが「無関心期」にある場合、食事改善のメリットや現在の状態が将来に与える悪影響の説明、また「関心期」ではスモールステップでの具体的な行動目標を提案します。それぞれの段階に応じて、適切な目標の提案や声かけを行い、段階的に行動変容を促していくのがこのモデルの考え方で重要な部分です。

 今日のお話は「健康心理学」の授業の中でも詳しく解説されていますので、ご関心のある方は是非受講されてくださいね。