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心理学エッセンス

臨床心理学分野

スクールカウンセリングの実際
-スクールカウンセラーを学校で
活用してもらうために-

井上 裕樹

2017.9.29
スクールカウンセリングの実際-スクールカウンセラーを学校で活用してもらうために-

 今回は、日本でのスクールカウンセリングの成り立ちとスクールカウンセラーが学校に活用してもらうためには、どのようなことを積み重ねていくかということをお話しようと思います。
 スクールカウンセリングは、1995年、文部省(現文部科学省)のスクールカウンセラー活用調査研究委託事業として「外部の専門家である臨床心理士を投入し、教師と連携しながら児童生徒の役立つ援助をする」(村山,2001)ものとして開始されました。「事業開始当初に見られた閉鎖的な学校は徐々に開かれた学校へと変化を遂げ、また外部の専門家として学校に入ったスクールカウンセラーもその役割を模索しながら一定の成果を上げてきた。...(中略)...しかし学校現場にある個々の事例に目を向けた時、必ずしも成功例ばかりではない。スクールカウンセラーが配置されてはいるものの、教職員との連携が不十分であったり、その役割を理解されていないことにより、組織的な活用が不十分な例がある」(山本,2011)との指摘があります。そのため、たとえ以前から何人ものスクールカウンセラーが入っていた学校であっても、自分が新たにスクールカウンセラーとして学校の中に入っていく際に、スクールカウンセリングがすぐさま機能するわけではないというのが実情です。実際は、スクールカウンセラーが積極的に教職員とコミュニケーションを取り、スクールカウンセリングを生徒指導体制の中に位置づけていく作業が必要になることが多いのが現状です。
 そこではまず、学校でのキーマン(多くは教頭先生や生徒指導担当者、養護教諭などのコーディネーターの方です)とつながりを持ち、カウンセリングをどのように活用していくか話し合いを持ちながら学校の教育相談システムを構築していき、児童や生徒、保護者への個別のカウンセリングを実施していく体制を整えていくこととなります。また実際の事例を通して教職員へのコンサルテーション(※)を実施しつつ、スクールカウンセラーの人となりになじんでもらい、教職員に、スクールカウンセリングがどのようなものかということについて徐々に知ってもらうことで連携を深めていくことが重要となってきます。その中で、教職員側からもっとカウンセリングについて理解を深めたい、子どもや保護者とよりよく関わっていくにはどうすればよいかというような意識が高まってくると、職員研修などを依頼されるようになってきます。そのようなことを積み重ねながらスクールカウンセラーとしてPTAや地域に講演をすることができるようになってくると、コミュニティに対しての心理教育的な地域援助へとつながってきます。しかし、このようにスクールカウンセリングの枠組みがある程度整ってきたとしても、その学校で、教職員の行う助言、指導、環境への働きかけなどが、どのような役割や考え方で行われているかというような学校風土に関する事柄についても常に捉えておくことが必要であり、個別のカウンセリングやコンサルテーションを実施していく上でとても重要となってきます。 
 今まで述べてきたように、スクールカウンセリングでは、スクールカウンセラーが、ただ児童、生徒、保護者へのカウンセリングをしてさえいればいいというものではありません。特に難しいケースになればなるほど、スクールカウンセラーが学校風土を把握しながら、全体を俯瞰し、その上で、困難を抱えている人々にどのような関わりを持つことができるか、または持ち続けることができるかに思いを巡らしていくことが、とても大切な事柄となってきます。私は、スクールカウンセラーとして働く中で、上記のようなことに思いを巡らせながら、自分のできる仕事の範囲を少しずつ広げ、自身のできることを誠実に行っていくことが重要だと考え、スクールカウンセリングの実践を今現在も続けています。

※コンサルテーションとは、機関・組織ないし個人が他機関、他の専門家との相談・協議、あるいは指導を受けること、また逆に専門家がそれらを行うことです。
参考文献
村山正治(2001):新しいスクールカウンセラー制度の動向と課題,臨床心理学1(2),137‐141.
山本健治(2011):学校心理臨床の展開に関する新たな試み,佛教大学大学院紀要教育学研究科編39,139‐156.