説得の方法

永野 光朗(産業心理学分野)

「自分の考えを聞き入れてもらおう」として、ひとを説得しなければならないことは日常生活のなかでしばしばあります。このような場面では相手をどのように説得すればうまくいくのでしょうか?
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 説得のメカニズムに関する心理学的研究では、人を説得するためのテクニックとして、以下のような効果的な方法があることが指摘されています。
①フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)
 本命のお願いをする前に、だれでも受け入れてくれそうな簡単な要請をまずはじめにして応じさせておく。その依頼に伴う遂行をやってもらってから本命の要請をする。
②ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック(譲歩的要請法)
 はじめに誰でも断るような無茶な要請をし、わざとそれを断らせておいてから、こちらが譲歩する形でより受け入れやすい本命の要請をする。
③ロー・ボール・テクニック(承諾先取り要請法)
 要請に応じる理由となるような魅力的な条件を示してまず要請を受け入れさせておいたあとで、魅力的な条件を取り下げてしまう。
 「アンケートにお答え下さい」と切り出して協力をさせておいてから、商品の売り込みにかかる街頭のキャッチセールスは①を実践したものですし、女性が恋人に「ダイヤの指輪買ってくれる?」と求めて「そんな高いもの無理だ」と断らせておいてから「それなら真珠の指輪でガマンするわ」というのは②に該当するでしょう。また自動車の販売担当者が「カーナビが標準装備のこのクルマを10万円引きでぜひ」と売り込んで「それじゃ買う」という承諾を取ったあとに「ワタシの勘違いでカーナビはオプションでしたが何とかご容赦のほどを」と言って懇願するといったやり方は③にあたります。
 ビジネスを含めた日常生活の様々な場面で、自己の利益を獲得するためにこれらの方法を利用することは可能だと思います。ただしある心理学者は、これらの有効性は「相手が譲歩をしたらこちら側も譲歩して受け入れざるを得ない(譲歩的要請法の場合)」といったように、人間の心理的な弱点につけ込んだものであるという指摘をしています。したがって目先の利益を得るためにそれを使ったばかりに人間同士の信頼関係を損なうことにもなりかねません。
 企業活動もこれと同じことで、消費者からの信頼を得ることなしに永続的なビジネスの成功はあり得ないというのが今の時代の常識的な考え方です。「真珠の指輪」よりは「人とのつながり」の方を選べというべきでしょうか?でもやっぱり真珠も捨てがたい・・・
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