同じものを共に視るということ

菱田 一仁(臨床心理学分野)

 バレンタインの時期ですね。皆さんも誰かに贈り物をしたり、されたり
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することがあるかもしれません。贈り物をするということは、相手と良い関係を作ったり、その良い関係を維持することにつながっていると思います。
 家族や友達、学校や職場など、多くの場面で他の人と良い関係を作ることは大切ですが、同時にとても難しいことの一つだと思います。人と良い関係を作っていくうえで、皆さんはどのような方法を使っているでしょう。贈り物をすることも有効ですが、一緒に出掛けるという人もいるかもしれません。同じ映画を一緒に見て楽しい気持ちを共有する、食事に行って同じ時間を共有するなど、良いもの、好きなものを一緒に見つめて共有することで相手との距離を縮まることもあると思います。
 人との関係のあり方には、一般に二者関係と三者関係とがあるといわれます。主に幼少期の親との密接した関係を基礎にする二者関係と、さらに成長していく中で、友達や学校などで多くの人との関係を持つうえで必要になる三者関係とがあり、人によっては二者関係は得意でも、三者関係は苦手という人もいるのではないでしょうか。反対に二者関係が苦手という人もいるかもしれません。
 その二者関係のあり方にもいくつかの種類があるといわれています。その一つが、相手と向き合って目を見つめ合うような二者関係であり、もう一つは、横に並んで同じものを一緒に見つめる二人の間の関係です。そして、日本の文化の中では前者よりも、後者の同じものを一緒に見つめる関係が大切にされてきたといわれています。
 そうした相手と一緒にものを見つめる関係のことを、精神分析家の北山修は、「共視」的な関係といっています。小さな子どもが車を指さし、それを見た親が"ブーブーだね"と言うように、あるいは親が子どもと一緒に絵本を見せながら読み聴かせをするように、同じものに共に視線を向ける体験が、人と人との関係の基礎になっているというのです。そして、同じものを一緒に見つめる共視的な関係が、他者との間に、親子のような安心感のある良い関係を作ることにつながると考えられるのです。
 そこで、他の人と良い関係を作りたいというときには、同じもの、特に好きなものや楽しいものを共有するようにすると、その"良いものを共有した"という良い印象が二人の間の距離を縮めてくれるかもしれません。

北山修編(2005)共視論―母子像の心理学 講談社選書メチエ
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