心理学エッセンスイメージ心理学エッセンスイメージ

心理学エッセンス

発達・教育心理学分野

子の発達は、親子の発達

奈田 哲也

2016.01.07
子の発達は、親子の発達

 2016年既に幾日か経っておりますが、三が日は、家族水入らずで過ごされた方も多かったと思います。家族団欒は、人の発達において大切なものとなります。家族で語らう親子のコミュニケーションが、子の発達の道筋をある程度決めるのです。
 乳児は無能ではありません。生後数ヶ月の時点で人の顔を明確に認識できますし、数も3くらいまでなら理解できます。また、奥行きを感じることもできます。例えば、床の半分が透けていて下まで見えるテーブルを用意し、その真ん中付近に乳児を座らせます。その後、それぞれの端から乳児を親が呼んだとします。この時、下が見えない方から呼ばれた場合は、乳児は、親のもとへやって来ますが、下まで見える方から呼ばれた場合は、やって来ません。乳児は、奥行きを感じられるため、テーブルの下が見えると、そこまで自分が落ちてしまう感覚となり、恐怖を感じてしまうためです。ですが、下まで見える方から親が乳児を呼ぶ際に、笑顔で呼んでいたらどうでしょうか。乳児は、親が笑顔で呼んでいるので、一見落ちそうだけど大丈夫だろうと思い、透けた床を渡って親のもとへやって来ます。
 上記の乳児の行動の背後にあるのは、親に対する信頼感であり、心理学の用語で言うと「社会的参照」です。社会的参照とは、乳児が曖昧な状況などで自分自身の行動を決定する前に意図的に親の顔を見つめるといった行動です。新しいおもちゃを乳児に与えた場合、乳児は、それを触って良いのか分かりません。そこで親の顔を見て判断するのです。親が笑顔なら安心して触るし、渋い顔なら触らないようにするのです。このことは、乳児と親の日々のコミュニケーションを通して培われた親子の信頼関係のもと、乳児は親を信じることで、新奇なことに挑戦できるようになり、様々なことを学習していることを示しています。
 従って、親に対する信頼感が弱いと、乳児は新規なことになかなか挑戦できません。学習には、結果的に失敗したとしても、新規なことに挑戦していくことが必要なわけですが、そのためには、親との信頼関係が乳児の場合には重要となるということです。逆に、親が先回りして子の障害になりそうなことを取り除いていると、子は新奇なものに挑戦できず、なかなか学習できません。親は子の能力を信じ、ある程度はやらせてみたりすることが大事になるのです。その中で親も様々な能力を獲得していくことでしょう。子の発達は親子双方の発達とも言えるのです。また、そのために、日々の親子のコミュニケーションを通して、子どもの能力を見極めていくことが大切になります。子は親が思っている以上に種々の能力を有しているのですから。