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心理学エッセンス

臨床心理学分野

カウンセリングと想像力

菱田 一仁

2018.07.09
悩むプロセスとこころの健康

 カウンセリングという言葉は多くの方が聞いたことはあるのではないでしょうか。そして、傾聴といった言葉も聞かれたことがあるかもしれません。そこから、カウンセリングで話を聞くとは、相手の話をしっかりと話を聞くこと、というイメージを持たれている方もいるでしょう。確かに、カウンセリングにおいては相手の話を大切にしながら聞きます。しかし、よく考えてみると、われわれは日常的に人の話を聞いています。朝からTVのニュースを聞き、学校で先生の話を聞き、会社で取引先の営業の話を聞き、さらに家に帰って家族の話を聞きます。では、それらとカウンセリングの中で話を聞くということはどのように違うのでしょうか。
 その一つが、直接言葉にされていない何かにも耳を澄ませる、ということだと思います。カウンセリングにおいては“あたかもその人であるかのように”話を聞くことが大切だといわれます。例えば、相談に来られて家族関係の話をしていた方が、“うちの家族はちょっとややこしいんです”と言われるとき、その“ややこしい”という言葉にはどんな意味が含まれているのでしょうか。もしかすると、憎みあっているのかもしれない、でもその背景には強い愛情があるのかもしれない、これまでにいろいろな出来事があったんだろう、今後この家族はどうなっていくんだろう……。
 人の思いは時に矛盾し、複雑で、言葉にされるのはそのうちのほんの一部分です。言葉にならないような様々な思い、あるいはその本人さえも気が付いていないような思い、それらに耳を澄ませることがカウンセリングにおいては大切になってくると言えるでしょう。
 では、そんなことが可能なのでしょうか。本人さえ意識していないような何かに耳を澄ませる、そのために大切なことが想像力だと思います。自分が相手の立場だったら、どんなことを思うだろう、どんなことを感じるだろう。カウンセラーの多くはそんな人のいろんな感情を知るために、小説を読んだり、映画を見たり音楽を聴いたりします。それはただの楽しみなだけではなく、いろんな立場に置かれたときに人に生じる感情を知ったり、自分自身がどんな反応をするのだろうか、ということを知る大切な勉強にもなるからなのです。