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心理学エッセンス

臨床心理学分野

大学生の学習意欲とその先の学びについて

井上 裕樹

2018.12.17
大学生の学習意欲とその先の学びについて

 今回は、大学での学習を通して、学生の皆さんの「学習意欲」や大学での「学び」について考えてみようと思います。私は、近頃の大学生の多くが、単位を揃えることや授業内で与えられた課題に対して、ある程度うまく対処する能力を有していると考えています。しかし、授業内外で、自分で何かを考え、それらを深めていくことに対して苦手意識を抱いていたり、その必要性をあまり感じたりすることのない学生が少なからず増えてきているのではないかと思うこともあります。私の実感としては、学習意欲という観点からみると、それぞれの学生の皆さんの学習ペースに違いはあるにしても、大学のカリキュラムやレポート、テストなど、与えられた課題をこなし、大学教員からのよい評価を得ることや卒業単位の取得という外発的な要因によって学習意欲を高め、大学にある程度適応していくことは、大半の大学生にとってさほど困難な課題ではないのであろうと感じています。
 大学生が授業に臨むにあたり、課題に対して自分の力で何とかやり切れるかもという感覚を持ちにくかったり、課題に取り組む際の自分の気持ちの弱さを直視できにくかったりするとき、学生の皆さんの中には、クリアーしないといけない課題に積極的に取り組むことが難しくなってくる場合もあると思います。そのような、自己効力感の低さからの課題を回避してしまう状況になってしまう学生や否定的な自己を直視することの困難な学生さんにとって、授業に対して自身が積極的に関わり、ああでもないこうでもないと葛藤をしながら、授業や授業外での学習を通して、自身の学問への興味や学習意欲を高める循環を作っていくのは、学生の個人的な努力だけでは、相当難しいと私は考えています。このことに関して、私は、教員としては、学生に何時間以上学習させるという外的な枠組みの議論のみに留まらず、授業において、学生に相対する教員が説明の仕方や意欲の引き出し方に工夫をこらすという授業内容の充実や授業内外での学生との雑談や学生の皆さんとの対話的なコミュニケーションにも言及していかなければならないと考えています。
 そこで、まず、大学生の学習意欲を高めるということを「大学生の授業内容の理解」という観点から捉えてみると、大学生が、授業内外で授業のテーマに関して疑問を持てるか、疑問点に関して質問をしたり、自分で文献を読んだりして理解を深めることができるか、また一斉学習の講義において、話を聞くことでどれほど授業の内容を理解できているかなどが学習意欲に作用していると考えられます。そのため、学生の学習意欲を高めるには、教員が、ある程度学問を学ぶために必要な姿勢や大枠を示しながら、学生の皆さんがその内容に興味を抱いて自発的に取り組むことができるような内発的動機付けを授業において引き出すことが求められると思っています。また大学生が、教員から良い評価を受けたいということやカリキュラム上、単位を取る必要があるといった外発的動機付けだけで大学でのすべての学習に取り組むことにはならないように、教員が雑談などで学生の皆さんの知的好奇心をくすぐりつつ、内発的動機付けと外発的動機付けとの間で均衡が取れるように、積極的に関わってくことも大切なこととなってくると考えています。このことに関して私は、教員側が「なぜ自分は今まで勉強してきたのか、なぜ自分は大学にいるのか、なぜ自分は大学でなければならなかったのか、等を自分に問いかけてみる」(溝上、1996)ことで教員自身の学問に対する動機を再確認し、「学習者が自ら答えを見出す学習への価値付け」(溝上、1996)について教員が考えを持ち、それらを示していく必要があるとも感じています。
 最後に、学生の皆さんが私達教員との対話的なやり取りを通して、自身の「学習への価値付け」を行っていき、自発的に学習に取り組むような心のあり様になり、学習意欲をもとに、皆さんの大学での学びが、学問的探求として位置づけられるような学びへとつながっていってもらえればと願っております。皆さんもいろいろと思いを巡らせ、できれば、教員や友人、知人との対話することを通して、大学での学びを自身にとって価値のあるものにしていっていただければと思います。皆さんが大学の中で自身の学びをどう進めていかれるか、私も日々いろいろと思いを巡らし、工夫できることを考え、皆さんの主体的な学びを引き出していければと思っています。

参考文献
溝上慎一(1996). 大学生の学習意欲、京都大学高等教育研究2、184‐197.