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心理学エッセンス

臨床心理学分野

カウンセリングで悩みは無くなる?

菱田 一仁

2019.07.16
カウンセリングで悩みは無くなる?

 カウンセリングというとどういうイメージがあるでしょうか。何か悩みを持っている人が、その解決を求めて通う、というイメージが強いかもしれません。では、悩みというのはカウンセリングで無くなるのでしょうか。
 例えば、将来の進路に悩んでいる、などの場合であれば進路が決まれば悩み自体が無くなることもあるでしょう。では、親子関係に悩んでいる、あるいは過去に経験した出来事から抑うつ状態が続いているといった場合はどうでしょうか。相手に対する苦い思い、過去の出来事についての辛い思いなどをカウンセラーにいくら話しても、過去を変えることは出来ないでしょう。場合によっては、自分の苦しかったことを思い出し、話をし続けることが辛いだけで、意味がないものと感じられることさえもあるかもしれません。実際、カウンセラーとして話を聞いていると、相談に来られる方は、多くの場合既に他の人に相談していたり、自分自身でも何度も考えていたりしていることが多く、それでも解決できないような問題は、簡単なアドバイスによって解決することができないような内容がほとんどです。
 それでも、カウンセラーはその人の話を一生懸命に聞きます。それは、カウンセラーがその悩みを簡単に無くしてしまえると思っているからではありません。むしろ、そこで動いている心の複雑さ、生きることの難しさ、そしてそこから生まれてくる可能性の多様さについて知っているからだと言えます。どれほど行き詰まっているように思えても、どうしても変えることのできない過去や現実を抱えながらも、相談に来られた方がその人らしい生き方を見つけていくことができることをカウンセラーは信じています。カウンセラーとの対話を通して、相談に来られた方自身が、物事の持っているいろいろな側面に気が付き、自分らしい生き方を見つけていくことをサポートすることがカウンセリングだと言えるかもしれません。そのためにこそ、カウンセリングを行うには、人の心について、人がどのように悩み、どのように変化が訪れるのか、そしてそれをどのように支えることができるのかといった専門的な知識が必要なのです。なぜならそうした専門知識をもっていることによって初めて、カウンセラーはその人の抱えている、簡単には人に話せない、時には矛盾に満ち、言葉では言い表せないような複雑な苦しさを共に抱え、心の変化を正しくサポートすることができるからです。
 そう考えると、カウンセリングで悩みが無くなるというよりも、カウンセリングを通して、悩みの種は抱えながらも必要以上に悩まされてしまうことなく、自分の人生に納得してその人らしい人生を生きることができるようになることが大切だと言えるでしょう。