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心理学エッセンス

社会・産業心理学分野

社会心理学からみた
「外見(身なり)」の大切さ(その1)

永野 光朗

2014.10.30
社会心理学からみた「外見(身なり)」の大切さ(その1)

 まずは自分の振り返りと反省から。

 そもそも若い頃から身なりにはまったく無頓着であった。
 「大学のセンセーでベンキョー一筋だし、あんな格好をしていても仕方がないねえ」と周りのひとびとに許容していただけることを、この職業についた唯一の利点とありがたく感じ、そのおかげで何とか生きてきた。

 そんな人間がとうとう齢五十を迎えてしまった。いまや「身なり構わぬ中年男性」どころか「隠すべきところさえ隠していればよい」とばかりに98円の靴下、980円のワイシャツ、1480円のネクタイ(なぜかすべて端数価格であるが)を身に纏っている。アタマのてっぺんからつま先まで身につけているものすべてを合計しても1万円でおつりがもらえる自信がある。

 そんな自分の哀れな身なりはあえて顧みず、社会心理学者として主張すべきことは「やっぱり人間にとって身なりは大切である」ということである。私の場合「せめて2万円かけてマシな身なりをしていれば、もっとチャンスに恵まれてより良い人生を送れた」のかもしれないのである。いやひょっとして3万円は必要なのかもしれないが・・・・

 ではなぜきちんとした美しい身なりをしていれば人生がうまくいくのだろうか?このことには十分に実証された根拠があり論理的説明が可能である。過去の心理学的研究をふまえて整理してみたい。

外見はその人の行動を変える

 衣服や装身具はその個人を取り巻く「状況」を構成する重要な因子であり、もし状況が行動に対して強力に作用するのであれば、個人の外見がその人自身の行動を引き出したり変容させたりすることも起こりうる。

 Zimbardoらが行った「模擬監獄実験」では、新聞広告などで集めた被験者のうち、11人を看守役に、10人を受刑者役にグループ分けし、それぞれに看守の制服と囚人服を着用させ、その役割を実際の刑務所に近い設備を作って演じさせたところ、時間が経つにつれ行動がエスカレートしていき、おのおのが必要以上に高圧的な行動(看守役)や自虐的な行動(囚人役)をとるようになった。

 これは反社会的行動(良くない行動)についての事例であるが、外見を整えることが人間の意欲を高めポジティブで生産的な行動(良い行動)を生み出すことは言うまでもない。女性は化粧をすることで自信を強め、積極的な対人行動をとるといった「自己への効用」がみられることは数々の心理学的研究からも実証されているし、社会的環境への適応が難しくなった人々に対して化粧や衣服による印象管理から行動の改善をはかるといった「臨床的応用」も試みられている。