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心理学エッセンス

社会・産業心理学分野

消費と広告の心理学

永野 光朗

2013.09.11
消費と広告の心理学

 私が専門としている消費者行動研究は「消費者の心や行動の仕組み」の客観的理解を目指す研究分野であるといえます。このような理解を行うための枠組みとしてK.レヴィンが提示した人間の行動に関するモデルが利用できます。彼は人間の行動に関する一般法則としてB=f(P・E)という図式を提示しました.ここでBは行動(Behavior),Pは行動の主体である人間(Person),そしてEは個人が置かれている環境(Environment)をあらわしています。つまりこの図式は,人間の行動が個人特性(パーソナリティ,価値観,ライフスタイルなど)と個人がその時に置かれている環境・状況要因(広告,販売促進,店舗内環境など)との相互影響下で生じることを意味しています。

 このような消費者理解は企業活動にとってどのような意味をもつのでしょうか?
消費者行動を個人特性から理解することは,企業活動としてのマーケティングの遂行という実務的な立場からとくに強調されます。たとえばマーケット・セグメンテーション(市場細分化)を遂行するためには,このような理解は欠かせません。市場(消費者の集合体)を均質なものではなく,個人特性を把握してグループ分け(細分化)することで,それぞれのニーズに応じた商品開発やブランド戦略や無駄のない広告戦略が実現できるのです。

 また環境・状況要因が消費者行動に及ぼす影響の仕組みを知ることもマーケティング遂行において重要です。たとえばスーパーやコンビニの店頭における消費者行動の仕組みについては研究がすすみ,その成果が陳列やPOP広告などを含めた店舗内の環境づくりに生かされています。

 さらに「消費者理解」は消費者自身にとってもたいへん重要です。企業が消費者の不利益をあえて承知したうえで行う営利活動(いわゆる悪徳商法)に象徴されるように,消費者の心理的弱点を利用して利潤を得ようとする業者はあとを絶ちません。こういった「不当な企業活動」から自己を守るために消費者自身がその行動特性や心理的メカニズムを客観的に理解する必要があります。

 まさにこのようなテーマが9月7日・8日の両日に京都橘大学で開催された産業・組織心理学会第29回大会における大会シンポジウム「消費者と企業のより良い関係性の構築を目指して-社会心理学からの提言―」で取り上げられました。
司会・基調講演を杉本徹雄先生(上智大学経済学部教授)に御願いをし、激変する社会における消費者研究の課題と重要性についてお話しをいただき、上妻義直先生(上智大学経済学部教授)より、会計学の立場から企業活動の現状と課題についてお話しいただきました。つぎに池内裕美先生(関西大学社会学部教授)から、消費者の視点から見た企業活動のお話しをいただきました。とくに苦情行動の観点から、企業と消費者の良好な関係性を維持・再構築するために、苦情をめぐる基礎的知識や効果的な施策を提言されました。最後に杉浦淳吉先生(慶應義塾大学文学部准教授)より、循環型社会の構築を目指して消費者と企業と双方がかかわって実施された参加型会議を紹介し,環境問題解決にむけて消費者と企業との相互理解と問題解決に向けた教育実践について提案されました。ご報告のあとには来聴者の方々も含めて活発な討論が行われました。
2013年10月6日に開催される入学説明会での特別講演では、このような「消費と広告の心理学」をテーマとしてお話しをいたします。ぜひご期待下さい。