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心理学エッセンス

社会・産業心理学分野

社会心理学からみた
「外見(身なり)」の大切さ(その2)

永野 光朗

2014.11.06
社会心理学からみた「外見(身なり)」の大切さ(その2)

外見はまわりのひとびとの行動を変える

 外見は「自己への効用」だけではなく「他者への効用」も有する。整った容姿は人々を惹きつけて他者との相互作用を促進するので、何らかのチャンスを得る可能性が高い。心理学的研究からは外見が対人認知(性格理解)や対人行動(援助行動や応諾行動など)に相当の影響力を持つことが示されている。

 アメリカでの陪審員を想定した実験では、被告の外見の善し悪しが裁判の判決に影響する(つまり美人であれば刑が軽くなる)ことも示唆されている。このことは日本の裁判員制度においても参考にすべきことであろう。外見の影響力についてはアメリカと日本との文化差も指摘されるが、一般的な人間の認知判断の仕組みから説明が可能である。すなわち「美しい容姿である」ことと「醜い行動(犯罪)をとる」ことは矛盾していると感じて認知的な不整合を生み出すが、人間はこのような不整合は避けて認知的一貫性を求める傾向がある。この場合「外見」の方は客観的事実で見た目に明らかなので、そちらの方に基準を置き、それにあわせてよりあいまいな事実である内面的資質や行動を判断してしまうことが以上のようなバイアス(歪み)を生み出すと説明できる。

外見の功罪をめぐって

 「美人は得をする」ということに人々はうすうす感づいていながらも、とくに日本においては「人間は外見ではなく中身が肝心」というタテマエ論が支配的であるがゆえに、外見の影響力については明確なかたちで議論されて来なかったきらいがある。しかし数々の実証研究からは外見が人間の行動に対して相当の影響力を持つと結論づけられる。

 「容姿で能力を決めつける」といったいわゆる「ステレオタイプ的判断」が望ましくないことは当然だが、じつはこのような判断のやり方は人間が多用していて避けられないことを近年の行動経済学的研究や社会的認知研究は示している。「血液型に基づく性格判断」のようなどうみても合理的根拠に欠ける考え方が流布してしまうのも人間の認知判断の歪みや誤りが原因であることが指摘されているが、この場合いくら「血液型判断はおかしい」と主張しても人々の考えはなかなか改まらないであろう。

 以上のことから「外見の影響力」は間違いのない客観的事実と言うことができ、それを整えるための衣服や装飾品を「良好な社会的関係を構築し自己を高めるための社会的道具」と位置づけて積極的に活用する、ということは社会の本質を踏まえたうえでの非常に重要な視点であることを最後に強調したい。
 と、ここまで書いたところでふと自分の身なり(98円+980円+1480円+・・・<1万円)に気づいて「理論と実践の両立」はいかに難しいことかと暗澹たる気持ちに・・・・