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心理学エッセンス

行動神経科学分野

やる気と報酬の関係について2
-ほめるとやる気は高まるか-

坂本 敏郎

2015.04.10
やる気と報酬の関係について2 -ほめるとやる気は高まるか-

 一般的に人を『ほめる』ことは、望ましい行動の頻度や、やる気を高めるよいことだと考えられています。一方で、人をほめることはとても難しいということを、私達は経験的に知っています。誰の何を、どのように、どんなときにほめるかによって、その効果は変わってきそうだからです。実証的な研究では、ほめるとやる気が高まるという結果もありますし、ほめるとやる気に悪影響を与えるという結果もあります。

 知能テストと類似した課題を解かせて、能力(頭のよさ)をほめられた子どもは、ほめられなかった子どもに比べて、その後、難しい課題にチャレンジしなくなることがわかっています。さらに、最初に解かせた課題と同じような課題を再度解かせると成績が悪くなる(自身の最初のテストと比べても、ほめられなかった子どもと比べても)ことも示されています。これは大人でも認められている現象です。うまくできたときにほめられると、うまくできなかったときには叱られるかもしれないと思うのかもしれません。過度にほめられると、次のチャレンジに対してプレッシャーがかかるということもありそうです。

 デシの自己決定理論によると、人は、自分の行動を自分の意思で選択したいという自律性の欲求を持っています。自律性の欲求に基づく行動と報酬(金銭やほめ言葉)とに矛盾がない時はよいですが、そこにミスマッチが生じると、人は違和感を抱いてしまうのかもしれません。効果的なほめ方は、『誠実にほめる』『努力をほめる』『具体的な行為をほめる』などが挙げられます。やる気や望ましい行動の頻度を高めるために効果的にほめることは重要ですが、自律性の欲求を満たす環境やサポートを整えて『じっと見守る』こともまた重要なことだと思います。
 こうして理論や実験結果を並べてみても、実際にはうまくいかないのが『子育て』であり『教育』です。だからこそ、『やりがいのある』ことなのかもしれません。

2つのコラムは、下記の図書を参考に執筆しました。
心理学概論第2版、4章 学習、 6章 動機づけ、 岡市廣成・鈴木直人 監修
行動を起こし、持続する力 外山美樹