ESSAY心理学エッセンス

孤独だと寒いのは比喩じゃなかった

孤独だと寒いのは比喩じゃなかった

石山 裕菜

2022.08.03

#こころの健康

暑い日々が続いていますが、お元気でお過ごしでしょうか。京都は相変わらずthe盆地の気候で、湿度も気温も高いですから、蒸され続けている小籠包のような気持ちで日々を送っています。さて、真夏の、こんなにも暑い時期にも関わらず、ふと寒さを感じることはないでしょうか。それはもしかしたら、孤独を感じているせいかもしれません。

Zhong & Leonardelli (2008)は、参加者を部屋に呼び、2つのグループに分け、1つのグループには仲間に入れてもらった経験を、もう1つのグループには仲間外れにされた経験を思い出させました。その後、「大学の設備管理課が部屋の空調について知りたいと言っている」と話をし、部屋の温度が、何度くらいであるかを尋ねました。すると、仲間外れにされた経験を思い出させたグループは、仲間に入れてもらった経験を思い出させたグループよりも、摂氏で2.6度も部屋の気温が低いと答えました。

また、Zhong & Leonardelli (2008)は、実験的に、実際に仲間外れになった状況を作り出しました。参加者は、「オンライン上で他の2名の参加者とキャッチボールをしてください」と言われるのですが、実は他の参加者はおらず、コンピュータのプログラムとキャッチボールを行うことになります。この時、参加者は自分にボールが回ってくる条件と、回ってこない(仲間外れ)条件に分けられます(サイバーボール課題と言うのですが、回ってこないのがわかっていて取り組んでも、心がえぐられるような課題です)。キャッチボールを終えた後、参加者にホットコーヒー、温かいスープ、リンゴ、クラッカー、よく冷えたコーラの5つの商品をどれくらい欲しいかを評定させました。すると、仲間外れ条件では、仲間に入れてもらった条件と比較して温かい食べ物を高く評価しました。参加者は、孤独を感じることにより寒さを感じ、温かいものが欲しくなったというわけです。加えて、IJzerman et al. (2012)は、このサイバーボール課題で仲間外れにされたグループの参加者は指の温度が下がることも示しました。実際の体温までもが仲間外れにされることによって下がってしまうのです。

このように、私たちの認知が物理的、心理的、環境的影響を受けているという認知理論を身体化認知(embodied cognition)と言います。秋になるとどこか孤独を感じるのも、下がった気温による身体化認知が要因の1つとして考えられます。では、そうした孤独感を和らげるにはどうしたらよいでしょうか。IJzerman et al. (2012) では、サイバーボール課題で仲間外れにされたことによるネガティブな感情が、温かいお茶を飲むことで緩和することも検証されています。とりあえず、孤独を感じたら温かいお茶を飲んでほっこりしてみるとよいかもしれません。

IJzerman, H., Gallucci, M., Pouw, W. T. J. L., WeißgerberS. C., Van Doesum, N. J., & Williams, K. D. (2012). Cold-blooded loneliness: Social exclusion leads to lower skin temperatures. Acta Psychologica, 140, 283-288.
Zhong, C.-B., & Leonardelli, G. J. (2008). Cold and lonely: Does social exclusion literally feel cold? Psychological Science, 19(9), 838–842. https://doi.org/10.1111/j.1467- 9280.2008.02165.x