ESSAY心理学エッセンス

ある父親の体験記

ある父親の体験記

雲財 啓

2024.08.09

#子ども・教育

いきなり私事で恐縮ですが,2024年現在の我が家には乳幼児が居ます。そうなると子育て関連のニュースが耳につきやすくなるのですが、その一つに妊娠や産後のうつがあります。このようなうつは、母親だけではなく父親もなり,「妻が大変なのは十分にわかっているので,自分がしんどいだなんて口が裂けても言えない」(杉浦,2023)という父親特有の状態もあります。また,「父親は『支援をする人』であり,『支援を受ける対象』ではないと認識されている」(杉浦,2023)などの課題が指摘されています。
このような妊娠や産後に関するうつについて、「心理の専門家」というよりは子どもの父親としての実体験、特に育休に焦点を当てて以下では書いていこうと思います。
育休を取る前の認識として、「これくらいの休み(数週間)があれば子どものお世話はできるだろう」、「女性は大変らしいから自分がとった休みの間(数週間)で助けたい」と考えていました。(今思えばなんと愚かしい…。)
それで育休に入りましたが、認識の甘さを痛感しました。おむつを替えたり家事をしたりは想定内でしたが、突発的な体調不良(母子)での医療機関の受診、繰り返す夜泣きによる睡眠不足、うまくいかないことで削られていく精神的余裕、積み重なった疲労を回復させたいものの回復しきらず悪循環などなど…時間は圧倒的に足りません。当たり前といえば当たり前ですが、そりゃしんどくもなりますよね。(実際なりました。)
このような体験を経た現在の育休に対する認識は、「どれだけ時間があっても足りることはない」、「子育てする中で困ったことがあれば、周りにヘルプをどんどん求めて助けてもらう」でした。特に制度面に関して、その時点の環境と相談しながらですが、極力長い期間の育休を取って、様々なことに関われることは大切だと感じます。
以上、あくまで一つの体験談ですが、育休について父親として感じたことを中心に書いてきました。父親もうつになり得ると感じましたし、そうならないためにも、自分が悪い状態にならないためのケア、困りそうなときには「困ってまーす!誰か助けて!!」と声高にヘルプを叫ぶこと(とためらいなくそう動く気持ち)が大切だと思います。この記事は父親を中心に記載していますが、妊娠や産後に関わる全ての人が、うつなどのしんどい状態にならないように、自身のケアや周囲にヘルプを求めてよいことを忘れないでいてほしいと感じます。

(引用・参考文献)
杉浦 加菜子 (編) (2023). Nursing Todayブックレット・22「産後うつ?」を見逃さない: グレーゾーンの母親・父親へのケア 日本看護協会出版会