ESSAY心理学エッセンス

石の上にも三年-あきらめず成し遂げる力「グリット」-

石の上にも三年-あきらめず成し遂げる力「グリット」-

石山 裕菜

2021.11.01

#自分磨き

 MLBエンゼルスの大谷翔平選手は、「大リーグ初」という記録をいくつも打ち立て、日本のみならず、アメリカでも話題をさらっています。大谷選手に関するニュースや記事などを拝見すると、まさに自分とは別次元の「特別な人」であるように思えます。それでは、特別な人を特別にしたのは何だろうと考えてみると、1つの要因として「GRIT (グリット)」の高さを挙げることができるかもしれません。
 GRITは困難や失敗、競合するような目標があったとしても、長期目標に対して「一貫して」「粘り強く」取り組むことのできる力 (Eskreis-Winker et al., 2016) のことです。自分にとって重要な目標に専念し、困難や挫折に直面しても粘り強く努力し続けることができるというこの力が、学習やパフォーマンスだけでなく、なんと健康状態や感情状態にも影響を与えることがわかっています。
 GRITの高い人は、自分にとって重要なことのために多くの時間を費やしますし、地味な反復を嫌がりません。Duckworth et al. (2007) の研究では、全米で開催された単語のスペルの正確さを競う大会で、GRITの高い人はそうでない人と比較して、良い成績を収めたそうです。また、彼らは自分のパフォーマンスを向上させるために必要な目標を立て、それを達成するための努力をし、再度自己のパフォーマンスを検討した上で目標を立てるということを繰り返し行っていたようです。
 幸いなことに、GRITは今からでも伸ばすことができます。そのためにできることの1つに「成長マインドセット」を持つことがあります。(詳細はこちらをご参照ください。)。さらに、マインドセットとGRITには正の相関があるだけではなく、それぞれがそれぞれを半年後には成長させるという関係性にあるようです(Park et al., 2020)。「自分は努力すればよりよいパフォーマンスをすることができるんだ」と信じて、自分にとって大切な目標に取り組んでみると、「特別な人」になるのは難しくとも、あなたの「特別な能力」を見つけることができるかもしれません。

引用文献
Duckworth, A. L., Peterson, C., Matthews, M. D., & Kelly, D. R. (2007). Grit: Perseverance and passion for long-term goals. Journal of Personality and Social Psychology, 92(6), 1087–1101.
Eskreis-Winkler, L., Gross, J. J., & Duckworth, A. L. (2016). Grit: Sustained self-regulation in the service of superordinate goals. In K. D. Vohs & R. F. Baumeister (Eds.), Handbook of self-regulation: Research, theory and applications(3rd ed., pp. 380–395). New York: Guilford.
Park, D., Tsukayama, E., Yu, A. & Duckworth, L.A. (2020). The development of grit and growth mindset during adolescence. Journal of Experimental Child Psychology, 198, 104889.