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心理学エッセンス

臨床心理学分野

悪いストレスでも良いと思えば身体に良い?

石山 裕菜

2019.02.06
悪いストレスでも良いと思えば身体に良い?

 突然ですが、皆様は今、どれ程ストレスを感じていらっしゃいますか?また、ストレスにどのようなイメージを持っていますか?

 ストレスというと「身体に悪い」「最悪なもの」というイメージを持つ方も多いと思います。しかし、ストレスは悪いだけのものではありません。ストレスには快ストレスと不快ストレスがあります。例えば、好きなアーティストのコンサートに行けば、心臓がバクバクし、血圧が上昇します。運動をした時も同じような現象が起こりますよね。このように、私たちの体に普段と違う状態をもたらすものをストレスと呼びます。その中でもこうした快ストレスはやる気を上げ、健康に良い効果を与えます。もちろん、これもあまりに強すぎると私たちの身体にとっては良くないのですが……。ただ、今日の話はこの快ストレスの話ではありません。何せ今回のタイトルは「悪いストレスは良いと思えば身体に良い?」ですから。

 さて、人間関係で嫌なことがあったり、何か失敗をしたり、そんな時私たちは不快ストレスを感じます。この不快ストレス、伝統的に健康に悪いものだと考えられてきました。しかし、ストレスを多く感じていてもストレスが健康に悪いと思っていない人々の死亡リスクは低く、なんと、ストレスをあまり感じていない人よりも低くなるそうです(Barefoot et al., 1998) 。さらに言えば、いわゆるトラウマ的な体験をし、健康状態が悪化したとしても、その体験にポジティブな意味を見出せれば、健康状態は改善しやすいですし(Pennebaker et al.,1997)、その体験を乗り越え、成長することすら可能である(Tedeschi, & Calhoun, 1996)と言われています。つまり、私たちがストレスやネガティブな体験をどのように捉えるかによって、自身に与える影響が変わってくるということです。

 とはいえ、「ストレスが悪いと思ってはいけない」と思うと、私たちは逆に「ストレスが悪いものだ」という考えにとらわれてしまいます。「チョコレートについて考えてはいけない」と思えば思うほど、私たちはチョコレートについて考えて、食べたくなってしまうのと同じです。ストレスについてコントロールできなくても、悪いものだと思ってしまっても、それを受け入れ、ストレスとつきあっていくことが必要です。

 「そんなの難しい!」という人に朗報があります。なんと、誰かが「回復していく物語」や「成長していく物語」をみることで、私たち自身もストレスに向き合ったり、一歩を踏み出したりする力を得ることができる!!……かもしれないのです。というわけで、ストレスフルな時は映画を見るのがおススメです。ただし、間違っても落ち込みそうな映画は観ないでくださいね。

参考・引用文献 Aarts, H., Gollwitzer, P. M. & Hassin, R. R. (2004).Goal contagion: Perceiving is for pursuing.
Journal of Personality and Social Psychology, 87, 23-37
Barefoot, J. C., Maynard, K. E., Beckham, J. C., Brummett, B. H.,Hooker, K., & Siegler, I. C. (1998). Trust, health, and longevity. Journal of Behavioral Medicine, 21, 517–626.
Hatfield, E., Cacioppo, J. T., & Rapson, R. L. (1993). Emotional Contagion. Current Directions in Psychological Science, 2, 96–100.
Pennebaker, J. W., Mayne, T. J., & Francis, M. E. (1997). Linguistic predictors of adaptive bereavement. Journal of Personality and Social Psychology, 72, 863-871.
Selye,H. (1974). Stress without Distress. Toronta McClelland & Stewart.(セリエH 杉靖三郎・田々井吉之介・藤井尚治・竹宮隆(訳)(1988).現代生活とストレス 法政大学出版局)
Tedeschi, R.G., & Calhoun, L.G. (1996). The posttraumatic growth inventory: Measuring the positive legacy oftrauma. Journal of Traumatic Stress, 9, 455-471.
Wegner, D. M. (1994). Ironic processes of mental control. Psychological Review, 101, 34-52.