ESSAY心理学エッセンス

リーダーだって未完

リーダーだって未完

藤原 勇

2024.07.01

#自分磨き

四十不惑と言いますが、40歳を過ぎてもまだまだ迷うことばかりです。最近は「教育ってなんだろう」と考え、悩むことが増えました。まだまだ自分も未完であり、成長途中だなと感じます。しかし、これは私だけでなく、多くの大人が抱えている悩みなのだと思います。京都橘大学のウェブページにも「大人だって未完だ。」というキャッチコピーがありますね。

また、大人になって、褒められたり、叱られたりする機会が減ったと不意に気がつきます。叱られないことは気持ちとしては楽かもしれませんが、自分の成長の糧が減ったと考えることもできます。そのような中で、大人はどうやって成長すればいいのでしょうか。

昨今のリーダーシップの研究ではリーダーの成長も重視されており、成長のための重要な要素の1つとして、セルフ・アウェアネスが挙げられています。セルフ・アウェアネスは、日本語では自己認識や自己覚知などと訳されています。要点は自分自身についてきちんと理解するということです。ただ、この「きちんと」がなかなか難しいのです。

多くの人は自分の短所や弱点、嫌な面から目を背け、気づかないふりをしがちです。もし気づいたとしても、意識的であれ無意識的であれ、自分の都合の良いように理解を捻じ曲げたり、忘れたりしてしまいます。

きちんと自己を理解する上で役立つツールの1つとして、心理テストがあげられるでしょう。心理学関連の授業を受講していると、性格や価値観、知能などの様々な心理テストを経験する機会があります。こうした心理テストは、自身を客観視し、きちんと現実の自己を理解する手助けになります(ただし、信頼性と妥当性が高い心理テストに限られますが)。

同様に、他者から意見やアドバイスをもらうことも自己理解を促す上で有用です。たとえば、褒められることや叱られることはポジティブ・フィードバックやネガティブ・フィードバックと呼ばれ、自己の成長に役立つものです。ただ、六十耳順と言うように、他者の意見に対して素直に耳を傾けられるようになるのは容易ではないようです。

内省し、自身の短所を見直すことはしんどい場合が多いため、心が疲弊しているときには避けた方がいいでしょう。心のゆとりがあるときに、心理テストや他者からのフィードバックを活用して自分と正直に向き合い、現実的な自己評価をしてみることで、自分磨きにつながることでしょう。
とはいえ、頭ではわかっていても、実践しようと思うとなかなか難しいものです。

参考文献
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(2019)ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] オーセンティック・リーダーシップ ダイヤモンド社
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部(2019)ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] セルフ・アウェアネス ダイヤモンド社
ターシャ・ユーリック(著)・中竹竜二(監訳)・樋口武志(訳)(2019)insight-いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力 英治出版