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心理学エッセンス

行動神経科学分野

科学的であるということ

坂本 敏郎

2011.08.22
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科学的に物事を考えるとはどういうことでしょうか?

科学的に考える時には自分の主観的な思い込みではなく、客観的な数値を示すことが重要です。

昨日と今日はどちらが暑かったでしょうか、と尋ねられたとしましょう。
昨日は昼間も涼しくて夜もよく眠れたけれど、今日は朝からとても暑くて今晩は蒸し暑いようです、と答えることは実に人間らしく好感がもてますが、科学的ではありません。
最高気温、最低気温ともに今日は昨日より3度上回っており、夜の湿度が20%以上も高いです、と答えるとより科学的です。

ただし、普段からこのようだと友達が少なくなるかもしれませんね。

新しい発見は、誰が行ってもその結果を「再現」できなければ科学の発見とはなりません。
油性のマジックで書かれた文字は、水で消すことができませんが、アルコールなら拭き取ることができます。反対に乾いた血液はアルコールでは落ちませんが、水なら拭き取ることができます。
これは誰がやっても同じ結果が再現できるでしょう。

再現できる確信があるということは、高い確率で「予測ができる」ということでもあります。
冬の次に必ず春がくるということは、地球と太陽の位置関係とそれらの運動の法則が明らかにされたことによって、確実に予測できるようになりました。

では、心理学は科学であるのか?という問いにはどのように答えればよいでしょうか。
難しいですね。新しい発見を目指す研究の世界では、心理学も科学であるべきだと私は考えます。「こころのはたらき」を実験や調査によって客観的に測定し、実証していくことによって、これまでに多くの心理学の知見が明らかにされてきました。

企業においても、例えば新規店舗をどこに出すか、売れ筋の商品をどの棚に配置するかなどのマーケティング戦略では、特定の人の思いつきよりも、客観的な調査結果や情報に基づいて判断する方が成功する確率は高まるでしょう。
もちろん、日常生活において「人のこころ」を数値化することには限界がありますので、心理学関係の仕事の現場では、客観的な数値がそれほど重要視されない場合があることもまた事実です。

科学的に明らかにされたことが、「常に正しい」というわけでもありません。
現在のところ多くの人が納得できるというだけで、真実が見つかっていない可能性を否定はできません。新しい理論が科学的に証明されれば、今正しいと考えられていることは常に更新されていきます。科学的に明らかにされたことについても「疑いを持つ姿勢」が真に科学的な態度と言えるかもしれません。

最後にひと言。
「サイエンスなのだから、実験データ(数値)に基づいて論理的に考えなさい」が口癖の先生は、「研究も最後は気合いだよ」ともおっしゃいます。
「がくっ」ときますよね。
だけど実験をするのも、論文を書くのも人間です。
サイエンスの世界も実は人間味にあふれた世界なのです。