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心理学エッセンス

社会・産業心理学分野

マインドセット -挑戦する過程を楽しめる心構え-

石山 裕菜

2020.10.05
マインドセット -挑戦する過程を楽しめる心構え-

勉強するのがつらい、スポーツで上手く結果がでない、そんな時、皆さんはどう考えるでしょうか?「この教科、理解するのが難しいけれど、一生懸命頑張れば自分の成長になる!」「今はつらいけど、努力すればきっともっと楽しくプレーできるようになる」と思う方もいれば、「頭が悪いからこんな問題できるわけない」「才能ないから、これ以上やっても無駄だ」と思う方もいるでしょう。心理学の動機づけ研究では、前者の様に「人間の能力は改善したり、発達させたりすることができる」という心構えを「成長マインドセット」、後者のように「人間の才能は固定的で普遍的なもの」という心構えを「固定マインドセット」(Dweck & Leggett, 1988; Molden & Dweck, 2006)と呼んでいます。

驚くべきことに、どちらのマインドセットを持っているかによって、設定する目標、重要とするものが違ってきます(Mangels et al., 2006)。成長マインドセットを持つ人は、新しいことを学べたかを重要視するため、難しいことやできないことにも果敢に挑戦することができます。最初は上手くできなくても、努力すればできるようになるかもしれないし、例え失敗したとしても、その過程が自分を成長させると思っているからです。そのため、失敗した際にもそこから多くのことを学び、さらなる努力をすることができます。一方で、固定マインドセットを持つ人は、自分の能力の高さを証明することを重要視するため、失敗することを著しく嫌い、自分が今できることを選び、すでに習得していることに取り組んでしまいがちです。失敗した際にも、何かのせいにしたり、誰かのせいにしたりしやすいので、結果として、成長できなくなってしまうことも多いです。

さて、皆さんはどちらのマインドセットだったでしょうか?また、どちらのマインドセットでありたいでしょうか?場合によりますが、学習においては、成長マインドセットの方が良いことは明らかです。とは言え、今、固定マインドセットの方、決して悲観的になる必要はありません。ありがたいことに、マインドセットは持って生まれた才能ではなく、変えることが可能です。なかなか癖になっているものを変えてみるのは難しいかもしれませんが、自分は成長できる、努力で変わることができるのだという思いを持って、ぜひ色々なことに取り組んでみてください。「変わるわけない」と思ったあなた、それは固定マインドセットのせいかもしれません……。



※マインドセットは古くは「暗黙の知能観」という名前で研究されています。


<引用文献>
Dweck, C. S. (1996). Implicit theories as organizers of goals and behavior. In P. M. Gollwitzer & J. A. Bargh (Eds.), The psychology of action: Linking cognition and motivation to behavior (pp. 69–90). Guilford Press.
Mangels, J.A., Butterfield, B., Lamb, J., Good, C.,& Dweck, C.S. (2006). Why do beliefs about intelligence influence learning success? A social cognitive neuroscience model. Soc Cogn Affect Neurosci., 1, 75-86.
doi:10.1093/scan/nsl013 Molden, D. C., & Dweck, C. S. (2000). Meaning and motivation. In C.Sansone & J. M. Harackiewicz (Eds.), Intrinsic and extrinsic motivation: The search for optimal motivation and performance (pp. 131–159). San Diego, CA: Academic Press.