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心理学エッセンス

社会・産業心理学分野

未来はどうなっているのだろう

白木 優馬

2020.11.09
未来はどうなっているのだろう

ここ数ヶ月,世間はコロナウイルスの話題で持ちきりです。実際に私たちの生活は1年前と比べて大きく変化してしまいました。望む・望まないにかかわらず,平日はリモートワークが中心で,お休みの日は遠出はせず,外出するとしても近場だけといった生活が続いている方も多いでしょう。
ここで,事態が収束して元通りの生活が取り戻せた未来を想像してみましょう。そのとき皆さんはどのような感情になっているでしょうか?遠出もしやすくなって,友達にも気兼ねなく会えるようになるため,非常にポジティブな感情になると考えるかもしれません。それでは反対に,事態が拡大して,再び緊急事態が再度宣言されることになった未来を想像してみましょう。そのときの感情は同じでしょうか?再び行動が制限される鬱々とした生活に戻ることになるため,非常にネガティブな感情に支配されると考えるかもしれません。このように未来の出来事について想像したとき,私たちはそこで抱くであろう感情を容易に想像することができます。そして想像した感情によって現在の私たちの心に少なからず影響を受けることがわかるでしょう。
ただし,実際のところ,私たちは未来の自分の感情を正確に予測することが苦手なようです。感情予測 (affective forecasting) という研究領域では,未来の感情は実際よりも大きく推定されてしまう(インパクトバイアス)ことがわかっています。たとえば,実際に関わってみるとそれほどではならないのにも関わらず,異なるグループの人との関わりは実際以上にネガティブな気持ちになると思われがちです (Mallett et al., 2008)。対照的に,自分が応援するチームの勝利は実際以上にポジティブな気持ちになると思われがちなようです (Wilson et al., 2000)。
未来を想像できる力は人間に備わった高度な認知能力のおかげではありますが,ただし必ずしもその力は完璧であるとは言えません。むしろ,この力のせいで反対に実現しない未来のシミュレーションによって過度に浮かれ,悲観的になるというのは非常に興味深い現象です。皆さんはご自身の未来をどのように描いているでしょうか?そしてその未来ではどんな感情を感じると考えているでしょうか?

参考文献
Gilbert, D. (2009). Stumbling on happiness. Vintage.(ギルバート, D. 熊谷淳子(訳)(2007).『幸せはいつもちょっと先にある―期待と妄想の心理学』 早川書房)
Mallett, R. K., Wilson, T. D., & Gilbert, D. T. (2008). Expect the unexpected: Failure to anticipate similarities leads to an intergroup forecasting error. Journal of personality and social psychology, 94(2), 265.
Wilson, T. D., Wheatley, T., Meyers, J. M., Gilbert, D. T., & Axsom, D. (2000). Focalism: A source of durability bias in affective forecasting. Journal of personality and social psychology, 78(5), 821.