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心理学エッセンス

発達・教育心理学

子どもは見ている、聞いている

柴田 利男

2019.12.04
子どもは見ている、聞いている

ある程度言葉を話せるようになった子どもは、ことあるごとに「どうして?」「なんで?」と聞いてきます。何をどう答えても「どうして?」「なんで?」、そのうち面倒になって「どうしても!」「大人になればわかる!」と質問を打ち切るということは、親であれば誰でも経験していることでしょう。子どもは見聞きしたことについて、ようやく使い始めた言葉でどのように表現すればよいのか一生懸命探っているのかもしれません。それだけ様々なことに興味を示し関心を向けていると言えます。大人たちはあまり気づいていないようですが、実は子どもは、親を含む大人の世界にも大いに関心を向けています。
かつて幼稚園児とそのお母さんを対象に、子どもが母親と父親、親と祖父母、あるいは親と他の大人の会話にどれほど関心を示し聞いているか、調査したことがあります。母親の回答を集計すると、約25%のお母さんは、子どもが大人の会話に関心を示すことは「ほとんどない」と答えました。ところが子どもに聞いてみると、両親が会話しているのを聞いていたことはないと答えた子どもは約10%以下でした。またお母さんに、子どもが聞いていた大人同士の会話の内容を尋ねたところ、「世間話」「子どもの知人の話」「仕事の話」の3種類で全体の70%弱を占めました。一方、同じことを子どもに聞いてみると、「日常のこと」「お出かけの話」「買い物の話」「仕事の話」など多種多様な答えが返ってきました。中には「喧嘩」「大事な話」「大人の付き合いの話」という答えもありました。どうやら親が思っている以上に子どもは親たちの会話をよく聞いており、何を話しているか子どもなりに理解しているようです。よくわからなくても、少なくとも「大事な話」をしているということは感じ取れるようです。また同じ幼稚園児でも年齢によって違いが見られました。年少、年中クラスの子どもは、どんな内容の会話にも関心を示していますが、年長クラスになると、自分に関わりのない内容の会話には関心を示さなくなるという傾向が見られました。おそらく何にでも関心を示す状態から、“自分”という意識が明確になるにつれ、興味・関心が自己関連的なものへと集中していくようです。
このように親が意図的に行う話しかけやしつけ以外に、子どもを特に意識せずに行っている行動を、彼らは興味津々で見聞きして、自分と自分を取り巻く大人の世界を彼らなりに理解しようとしています。どうせ子どもには理解できないと高をくくっていませんか?親が思っている以上に、子どもは大人を見ていますよ。どうぞ気を付けて!