ESSAY心理学エッセンス

小学校や中学校でみられる友人関係

小学校や中学校でみられる友人関係

河﨑 俊博

2022.11.01

#子ども・教育

心理学を学んでいても、実際、心理学の知識ってどんなふうに役立てているんだろう?と思う方もおられるかもしれません。今回は、最新の研究論文を紹介するというよりも、私のスクールカウンセラー経験のなかで役に立った知識の一つをお話しようと思います。
ご紹介するのは、思春期・青年期における仲間関係の位相(保坂・岡村,1986; 保坂,2010)についてです。保坂・岡村(1986)の論文では、思春期・青年期における仲間関係の様相として、以下の3つが仮説モデルとして提示されています。私自身は、この仮説モデルを頭の片隅に置きながら、スクールカウンセラーとして小中学校で児童生徒さんに関わったり、先生たちと話し合ったりしていました。

ギャング・グループ(gang-group):外面的な同一行動による一体感(凝集性)を特徴とします。小学校高学年頃にみられ、保護者からの自立のために仲間関係を必要しており、仲間の承認が家庭(親)の承認よりも重要になっています。
チャム・グループ(chum-group):内面的な互いの類似性の確認による一体感(凝集性)を特徴とします。中学生頃にみられ、互いの共通点や類似性を言葉で確かめ合うことが特徴です。ギャング・グループが同じ遊びや活動といった行動を通して一体感を求めるのに対して、チャム・グループではグループ内の合言葉や「私たち一緒ね」といった言葉による一体感を求めることが特徴的です。
ピア・グループ(peer-group):内面的にも外面的にも互いに自立した個人としての違いを認めあう共存状態です。高校生やそれ以降にみられ、互いの価値観や理想、生き方等について語り合い、共通点や類似性だけでなく、お互いの違いも認め合っていく関係です。

また、近年の特徴としては、①ギャング・グループの消失、②チャム・グループの肥大化、③ピア・グループの遷延化の3つが挙げられます(保坂,2010)。つまり、行動で同一性を確認するのではなく、言葉で“一緒”であることを確認し、いつまでも違いが認められないまま高校生以降も“一緒”であることを求めている、というのが近年の特徴です。他者との違いをはっきり表現すると攻撃的に捉えられる可能性があるため、それを避ける傾向があるようです。
こうした知識を頭の隅にでもおいておくと、小学校や中学校に勤務することになったときや、子育てをするときに役立つことがあるかもしれません。あくまで仮設モデルとして提示されたものですので、みなさんご自身で、日常生活や通学、通勤時に一度、子どもたちの様子をみていただき、ご自身の体験に沿って検証なさってください。

文献
保坂 亨(2010)いま、思春期を問い直す グレーゾーンにたつ子どもたち 東京大学出版会
保坂 亨・岡村達也(1986)キャンパス・エンカウンター・グループの発達的・治療的意義の検討 ある事例を通して 心理臨床学研究, 4(1), 15-26.