I’ll be your hero ?
I’ll be your hero ?
2024.11.01
#趣味
いつ頃からか、「異世界転生」というジャンルを見聞きするようになりました。本屋さんには専門のコーナーが設置され、異世界〇〇、転生したら〇〇、といった様々なタイトルが並んでいます。バナー広告で表示されるコミックも、平凡だった主人公が異世界で活躍したり転生したら溺愛されたり、そんな内容が多い気がします。
話の流れは大まかにこんな感じでしょうか?ごく普通の生活を送っていた主人公(protagonist)は、ある日異世界に転生してしまう(shift)。そこで自らの使命(quest)を告げられた主人公は、厳しくも温かい指導者や自分を信じてくれる仲間(allies)に支えられて旅を続ける。時には別れや挫折といった、試練(challenge)も経験するかもしれない。やがて、主人公は成長を遂げ(transformation)、ついに目的を達成する。ヒーローとなった主人公は、世界や仲間に貢献(legacy)しながら生きていくことでしょう。そしてまた、新たな旅が幕を開けるのであった…。
上記の7つの要素は言わばお約束であり、普遍的な「ヒーローの旅(Hero’s Journey)」神話(Campbell, 1949)、として多くの作品に取り入れられています。某映画監督も、世界的大ヒットを記録した映画シリーズの制作において、この神話を参考にしたそうです(BillMoyers.com, 1999)。
確実なソースがなく恐縮ですが、異世界転生物の流行は、「今の人生をリセットし、よりよい条件でやり直したい」という願望の反映である、とも指摘する声もあります。転生先では最初から強力な、または特殊な力が与えられており、ヒーローとして人生を無双できるのに。現実の自分には何の能力もなく、悩みばかりでうまくいかない同じ日々の繰り返し。現実逃避もしたくなるかもしれません。
私たちがヒーローになれるのは、異世界だけの話なのでしょうか?
Rogers et al(2023)の研究では、参加者に、ヒーローの旅の要素を用いて自分の生活を記述するよう求めました。たとえばこんな風に。
『平凡に暮らしていた私は、ある日突然、会社という異世界でプロジェクトを成功させる、という使命を果たすよう告げられました。自分にはできない、と何度も自信を喪失しましたが、同僚や故郷の両親、飼い犬といった仲間に助けられました。試練を乗り越えて成長を遂げた私はヒーローとして、会社や顧客といった人々に貢献していくのです………。』
自分の人生をヒーローの旅になぞらえて報告した参加者は、人生や日常生活のトラブルに意味を見出したり、幸福を感じたりする程度が高まったことが報告されました。現実世界の生活を見つめ直してみてください。あなたも既に異世界を冒険する、社会の誰かのヒーローである気付くことでしょう。さぁ、混沌(カオス)に満ちたこの世界を、選ばれし己の能力(アビリティ)や技能(スキル)と共に渡り歩いてゆこうではありませんか!
いえ、決して中二病というわけではなく………。
The Mythology of ‘Star Wars’ with George Lucas Retrieved October 1, 2024 from https://billmoyers.com/content/mythology-of-star-wars-george-lucas/#:~:text=GEORGE%20LUCAS:%20Well,%20in%20most%20%E2%80%94
Campbell, J. D. (1949). The hero with a thousand faces. Princeton, NJ: Princeton University
Rogers, B. A., Chicas, H., Kelly, J. M., Kubin, E., Christian, M. S., Kachanoff, F. J., ... & Gray, K. (2023). Seeing your life story as a Hero’s Journey increases meaning in life. Journal of Personality and Social Psychology. 125, 752-778.