ESSAY心理学エッセンス

ほどほどにのすゝめ

ほどほどにのすゝめ

竹田 駿介

2024.12.02

#子ども・教育

みなさんは自分の子どものことをどれくらいわかっていると思いますか?
通信生の方に質問すると,「90%はわかるよ」と自信をもって答えてくださる方もいれば,「全然わからない」と首をかしげている方もいらっしゃいます。これを読んでくださっている人の中には,子どもの気持ちがわからず,へとへとになっている人もいるかもしれません。
養育者が子どもの望んだ行動をとれるのはせいぜい3,4割程度であると言われています(遠藤,2022)。安定した関係を持っている養育者でさえも,このような確率でしか把握することができないのです。ではなぜ安定した関係を築けているのでしょうか。それは親子が絶えずやり取りを行っているからです。最初の応答が間違ったとき,子どもたちはさらに大きな声で泣いたり,して欲しいことを的確に伝えようとしたりします。それを受けて「ああそうだったの,間違ってごめんね」などと最後にはきちんと子どもの要求にたどり着くことができていました。
なので,子どもの気持ちを完璧にわかる必要はありません。私たち大人は忘れがちですが,子どもは大人に多くを依存している一方で,自分たちのタイミングや考えを持った自立した存在なのです。そもそも完璧にわかることはないのだと思います。やり取りを通して子どもは自力で主張するようになり,それが自己主張の力を育んでいくことになります。自分の意見が受け入れられる体験を通して,自分から求めることで,事態を変えることができるという体験にも開かれていくことになります。そういった体験が蓄積されると親以外の人にも相談したり援助を求めたりすることができるようになっていきます。そのため,親が敏感でありすぎることにも注意が必要です。自分の気持ちに気が付けなくなり,必要のない押しつけになってしまうかもしれません。大人は必要がない時には見守っておく,という姿勢も実は大事なのです。ほどほどに,あたたかく見守っていきましょう。

【参考文献】
遠藤利彦(2022)アタッチメントがわかる本「愛着」の力が心の力を育む 講談社