あと3日で地球が滅びるとしたら?
あと3日で地球が滅びるとしたら?
2020.02.03
#こころの健康
あと3日で地球が滅びるとしたら、あなたは残された時間を誰と過ごすだろう?私たちが、3日後とは言わないまでも、5年後や10年後も生きている保証はどこにもない。しかし、普段そのことを意識して過ごすことは少ないだろう。
Carstensen (1991) は、「自分の人生があとどのくらい残されているか」という未来への時間的展望に基づいた動機づけに従って人間関係が変化する、と述べている。まだまだ時間は残されていて死ぬことを意識することが少ない若者は、未来の準備に向けての目標を重視し、そのための人間関係を築く。一方、若者と比べて将来の時間が残されていない高齢者は、未来ではなく現在を重視し、愛情に基づく関係を大事にするようになる。ここで重要なのは、若者と高齢者という年齢ではない。たとえば、不治の病などで残された時間が少ないと感じている若者においても、上述の高齢者と同じような動機づけの変化が生じることが分かっている (Carstensen & Fredrickson, 1998)。つまり、人間関係の築き方を決めるのは、時間的展望なのである。
考えてみればこれは奇妙なことかもしれない。なぜなら、「死」への意識が「愛情」に基づく関係の価値を高めているからである。私たちは「いかによりよく生きるか」を考える機会は多い。充実した毎日を過ごすために何が必要かを考え、その時間を手に入れるために努力している。しかし、私たちに必要なのは、逆説的ではあるが「いかによりよく死ぬために生きていくか」ということなのかもしれない。
さて、冒頭の問いに戻ろう。あなたは残された時間を誰と過ごすだろう?愛する人や家族と答える人がほとんどではないだろうか。ただ、終わりは「死」だけではない。日常の様々な出来事にも必ず「終わり」がある。今年卒業する学生にとって、残された大学での時間はわずかである。だからこそ大学で出会うことができた人たちとの時間をより大切にできるのではないだろうか。
引用文献
Carstensen, L. L. (1991). Selectivity theory: Social activity in life-span context. In K. W. Schaie, & M. P. Lawton (Eds.), Annual review of gerontology and geriatrics. Vol.11. New York: Springer, pp.195-217.
Carstensen, L. L., & Fredrickson, B. L. (1998). Influence of HIV status and age on cognitive representations of others. Health Psychology, 17, 494-503.