ESSAY心理学エッセンス

しない後悔よりもする後悔・する後悔よりもしない後悔[前編]

しない後悔よりもする後悔・する後悔よりもしない後悔[前編]

白木 優馬

2021.10.01

社会・産業心理学分野

中学生・高校生時代にこんなことはなかったでしょうか。好きなクラスメイトに告白するか迷ったあなたは,友達に相談します。「フラれるのが怖いから…やめておこうかな。失敗して後悔したくないし。」それを聞いた友達は,こんなことを言ってあなたを励まします。「しない後悔よりもする後悔!勇気出して!頑張って!」と。この言葉に背中を押され,あなたは勇気を出してクラスメイトを呼び出します。そして,告白。結果,見事撃沈。目の前が真っ白に。「告白しなければよかった…」と恨みいっぱいに八つ当たりして,友達との関係にひびが入ってしまう…。実際に経験があるかはさておき,ありがちなエピソードだと思います。
ある行動を,「する/しない」という選択肢があったとき,その選択を失敗すると,「○○すれば(しなければ)よかった…」とネガティブな気持ち,つまり後悔を感じます。告白する/しないはもとより,人生には悩ましい選択が数多くあります。大学に行く/行かない,結婚する/しない,転職する/しない…といった重大な選択や,週末に出かける/出かけない,新しいスマホを買う/買わない,友達と会う/会わない…といった些細な選択など。何事も上手に選択して,後悔のない生活を送りたいものですが,日々たくさんの選択を迫られる中では,なかなかそうもいきません。もし選択の失敗が避けられないものだとしたら,“後悔”を小さくする方法を知って,うまく付き合っていくことが大事になるでしょう。
このとき重要になるのは,後悔の種類とその強さです。後悔は二つのタイプに分けられます。ひとつは,行動したときの後悔(「○○しなければよかった」),もうひとつは,行動しなかったときの後悔(「○○すればよかった」)です。ここでは,前者を「する後悔」,後者を「しない後悔」と呼びます。冒頭の例でいえば,告白の結果フラれて感じるのは「する後悔」,告白しなかったときに感じるのが「しない後悔」です。この二つを比較して「しない後悔よりする後悔」などと一般的に言われたりしますが,これは本当なのでしょうか?二つの後悔はどちらが強いのでしょうか?実は,この点について比較した研究では,同じ結果になるとしたら,しない後悔よりもする後悔の方が大きくなることがわかっています (Landman, 1987)。この結果に基づくと,後悔を小さくして生きていくためには,常に「しない」を選んでおけばよさそうです。告白するか迷ったら告白しない,結婚するか迷ったら結婚しない。「するかしないか,迷ったら行動しない。」これで確実に後悔の少ない人生を送ることができますね。めでたしめでたし。
いや…,本当にこれでよいのでしょうか。

後編へ続く